日本神経感染症学会
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ガイドライン

 単純ヘルペス脳炎は,初期治療が患者の転帰に大きく影響するため,緊急対応を要する疾患(neurological emergency)として位置づけられている.アシクロビルの開発により本症の死亡率は未治療の60〜70%から10〜15%と低下した.しかし,死亡と高度後遺症を含めた転帰不良率は33〜53%といまだ高く,社会復帰率も半数であり,更なる改善を目指した新たな治療薬や治療指針の構築が望まれている.従来,本症の転帰不良の要因のひとつとして,本症における適切な抗ウイルス薬の投与の遅れが指摘されていた.この問題解決には,第一線の一般医が本症を早期に疑うことの重要性を理解することについての周知の必要性と,本症の初期診断の難しさに対する一定の基準作成および不適切な治療に対する改善の必要性の理解が重要と考えられていた.このような背景をもとに,2005年に日本神経感染症学会から本症の診療ガイドラインが公表された.このガイドライン作成により,この点に関する改善には,少なからず寄与できたのではないかと考えている.

 しかしながら,この診療ガイドライン作成からすでに時間が経過しており,その改訂が強く求められてきた.今回,日本神経感染症学会・日本神経学会・日本神経治療学会の3学会合同による本症の新たな診療ガイドラインが作成された.このガイドラインが日本における本症の診療向上に少しでも寄与できれば幸いである.

 なお,この診療ガイドラインは現時点の日本における単純ヘルペス脳炎の診断と治療水準の向上を目的として作成しており,緊急の臨床の現場において対応しやすいように巻頭にフローチャートを示してある.また,本ガイドラインは臨床現場において刻々と変わる個々の患者の病態に合わせた臨床家の治療についての裁量権や今後の疫学的変化に対応した治療について規定するものではないことを,ここにお断りしておく.

2017年6月

「単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン」作成委員会 委員長
亀井 聡

単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2017

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