日本神経感染症学会
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ガイドライン

I.主として1型単純ヘルペス(HSV-1)による単純ヘルペス脳炎の症状・徴候(成人)

I 急性脳炎

1.発症年齢

各年齢でみられるが,50歳〜60歳に一つのピークを認める.

2.随伴するヘルペス症状

成人の,主としてHSV-1による単純ヘルペス脳炎(HSE)では,角・結膜炎,口唇ヘルペス,Kaposi水痘様発疹症,ヘルペス性ひょう疽などの症状の先行は少なく,また,それらとの関連性は必ずしも明らかでない.2型の単純ヘルペスウイルス(HSV)による髄膜炎では性器ヘルペス(初発ないし回帰感染)を認めることがある.

3.炎症症状

頭痛(高頻度),発熱(高頻度),倦怠感

4.神経所見

  1. 髄膜刺激症候(頭痛,悪心・嘔吐,項部硬直,Kernig徴候)(高頻度)
  2. 急性意識障害(覚醒度の低下,幻覚・妄想,錯乱などの意識の変容)(高頻度):亜急性の人格変化や見当識障害で発症するものもある.
  3. けいれん(中─高頻度)
  4. 局在徴候(低─中頻度):失語症,聴覚失認や幻聴などの聴覚障害,味覚障害,嗅覚障害,記銘障害,運動麻痺,視野障害,異常行動など
  5. 不随意運動:ミオクローヌス(低頻度)
  6. その他の症状(稀):自律神経障害,脳神経麻痺,SIADHなど

II 参考

1.脳炎以外の神経系への侵襲

髄膜炎,再発性髄膜炎(Mollaret髄膜炎)脊髄炎,その他(Bell麻痺,急性散在性脳脊髄炎,Guillain-Barré症候群)

2.軽症ないしは非典型例

慢性,遷延性,再発性,脳幹脳炎型

軽症ないしは非典型例はPCR診断では15〜20%程度みられる.

3.その他

以前は診断に至らなかった軽症例や非典型例がPCR法で診断可能となり,重症度は軽い傾向にある.免疫不全状態では時に炎症症状に乏しく痴呆,記銘障害などの高次脳機能障害が前景に立つこともある.

文 献

  1. 大谷杉士,青山友三,倉田 毅,ほか:Ara-Aによる単純ヘルペスウイルス脳炎治療の臨床試験成績.感染症学会誌 56:799─832,1982.
  2. 高須俊明,亀井 聡,田村英二,ほか:ヘルペス脳炎.綜合臨床 33 : 2451─2456, 1984.
  3. Koskiniemi M, Piiparinen H, Mannonen L, et al : Herpes encephalitis is a disease of middle aged and elderly people : polymerase chain reaction for detection of herpes simplex virus in the CSF of 516 patients with encephalitis. The Study Group. J Neurol Neurosurg Psychiatry 60 : 174─178, 1996.
  4. Whitley RJ, Soong SJ, Linneman C Jr, et al : Herpes simplex encephalitis. Clinical Assessment. JAMA 247 : 317─320, 1982.
  5. Domingues RB, Tsanaclis AM, Pannuti CS, et al : Evaluation of the range of clinical presentations of herpes simplex encephalitis by using polymerase chain reaction assay of cerebrospinal fluid samples. Clin Infect Dis 25 : 86─91, 1997.
  6. Picard FJ, Dekaban GA, Silva J, et al : Mollaretユs meningitis associated with herpes simplex type 2 infection. Neurology 43 : 1722─1727, 1993.

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