III.単純ヘルペス脳炎の治療指針(小児)
1.一般療法
呼吸・循環管理,輸液・栄養管理,電解質バランスの維持
2.抗ヘルペスウイルス薬の早期投与
(1)単純ヘルペス脳炎「疑い例」の段階で抗ウイルス療法を開始する.†
アシクロビル10mg/kgを8時間毎(1日3回)に点滴静注,14日間使用.§
(2)重症例
アシクロビル15mg/kg/回※を8時間毎に点滴静注,21日間使用.
(3)新生児例
アシクロビル10〜20mg/kg/回※を8時間毎に点滴静注,21日間使用.
(4)アシクロビル不応例では,ビタラビンの使用も考慮する.
単純ヘルペス脳炎が否定された段階で抗ウイルス療法を中止する.
3.痙攣発作,脳浮腫の治療
(1)けいれん重積に対する治療
- フェノバルビタール筋注 フェニトイン静注
- ジアゼパム0.3〜0.5mg/kg静注
- ミダゾラム0.1〜0.3mg/kg静注(引き続き0.1〜0.5mg/kg/hr持続点滴)
- チオペンタール5mg/kg静注(引き続き2〜5mg/kg/hr持続点滴)
- リドカイン5mg/kg静注(引き続き4mg/kg/hr持続点滴)
(2)脳浮腫に対する治療
- グリセロール,マニトールの点滴静注
注釈
†「疑い例」の段階で治療を始めた場合でも,診断確定のための検査を怠ってはならない.
§アシクロビルの投与に当たっては,ショック,皮膚粘膜眼症候群,アナフィラキシー様症状,DIC,汎血球減少症,意識障害や痙攣錯乱などの脳症,急性腎不全などの副作用に注意する必要がある.
※アシクロビルの1日薬用量を超えるため,インフォームドコンセントに留意し,家族/患者の同意を得られた時に増量する.
文 献
- Whitley RJ, Alford CA, Hirsch MS, et al : Vidarabine versus acyclovir therapy in herpes simplex encephalitis. N Engl J Med 314 : 144─149, 1986.
- Ito Y, Kimura H, Yabuta Y, et al : Exacerbation of herpes simplex encephalitis after successful treatment with acyclovir. Clin Infect Dis 30 : 185─187, 2000.
- Kimberlin DW, Lin CY, Jacobs RF, et al : Safety and efficacy of high-dose intravenous acyclovir in the management of neonatal herpes simplex virus infections. Pediatrics 108 : 230─238, 2001.