I.単純ヘルペス脳炎の症状・徴候(小児)
I 小児期の単純ヘルペス脳炎
- 発症年齢は,6歳未満が多いが,小児期のどの年齢層にもみられる.発生に季節性は無い.ヘルペス性歯肉口内炎の合併は稀.
- 初発症状としては発熱が高頻度.神経学的初発症状としては痙攣,意識障害,構音障害が多い.しかし,小児期の他の病因による急性脳炎・脳症と比較して,単純ヘルペス脳炎に特異的な症状は無い.
- 急性期には,半数以上は重篤な意識障害を呈するが,意識障害が軽い例も存在する.
- 成人の単純ヘルペス脳炎に比較すると,急速に意識障害が進行する例が多い.
- 小児の単純ヘルペス脳炎の20〜30%に再発をみとめる.
乳児期〜学童期に,発熱に伴い意識障害や行動異常などの中枢神経症状を来した場合には,他の明らかな病因がなければ本症を疑う.
II 参考:新生児期の単純ヘルペス脳炎(新生児ヘルペス中枢神経型)
- 発症病日は,多くは生後3週間以内である.
- 初発症状としては発熱,哺乳不良,活気の低下などの非特異的症状を呈する.痙攣は初発時の約25%に見られる.
- 続発症状として易刺激性,大泉門膨隆,局所性或いは全身性痙攣,弛緩性或いは痙性麻痺などの神経症状を呈するが,全身型に見られる全身症状は少ない.
- 皮疹や口内疹は診断の参考になるが,全例には見られない.
- 母親の性器ヘルペスの既往は25%にすぎない.
文 献
- 森島恒雄,川名 尚,平山宗宏:新生児ヘルペス全国調査.日児誌 93 : 1990─1995, 1989.
- Whitley RJ : Herpes simplex viruses. Fields Virology. 3rd ed. (Field BN, et al, eds), Lippincott-Raven, Philadelphia, 1996, pp2297─2342.
- Kohl S : Postnatal herpes simplex virus infection. Textbook of Pediatric Infectious Disease. 2nd ed. (Feigin RD, Cherry JD, eds), WB Saunders Company, Philadelphia, 1987, pp1577─1601.
- Ito Y, Ando Y, Kimura H, et al : Polymerase chain reaction-proved herpes simplex encephalitis in children. Pediatr Infect Dis J 17 : 29─32, 1998.
- Ito Y, Kimura H, Yabuta Y, et al : Exacerbation of herpes simplex encephalitis after successful treatment with acyclovir. Clin Infect Dis 30 : 185─187, 2000.